岩手県 地価調査レポート|令和8年
令和8年地価調査(価格時点7月1日・9月県公表)を、GREOが全343基準地から独自集計しました。県全体は下落が続く一方、用途と場所で明暗がくっきり——上昇の主役だった県央住宅地にブレーキがかかり、盛岡駅前と工業地だけが熱を保っています。
赤=上昇・青=下落。P3で全面拡大。
商業地の最大上昇は盛岡駅前通の+9.4%(前年+6.2%から加速)。ホテル・インバウンド投資が駅前に集中し、県内の他の商業地とは別世界の動き。
盛岡+0.8%(前年2.2)、滝沢+2.1%(同3.6)、金ケ崎+0.9%(同2.3)。上昇は続くが勢いは半減——建築費の高騰が住宅取得のコストを押し上げている。
物流・半導体の実需で8年連続上昇。最大は半導体関連が集積する奥州・江刺の+4.8%。ただし上昇幅は縮小し、こちらも一服の気配。
前回上昇していた119地点の76%(90地点)で勢いが低下。上昇→下落の転落は3地点で、うち2つは盛岡の人気住宅地、緑が丘と向中野。詳細はP4。
住宅地は令和5年、23年ぶりにプラス圏へ浮上した——しかしそこが天井だった。以降3年連続で沈み、令和8年は下落幅が拡大。全国平均(+1.0%)との差はむしろ開いている。商業地は33年連続の下落ながら、下落幅は長期では縮小基調にある。
各用途の継続基準地を変動率帯で色分け(数字=地点数)。住宅地は下落側が過半、工業地のみ上昇側が多数。
出典:岩手県 令和8年度地価調査より当社作図。基準地の位置・行政区域は国土数値情報(都道府県地価調査・行政区域データ)による。
前回と勢いを比べると、上昇していた119地点のうち90地点で勢いが低下(上昇幅の縮小65・横ばい化22・下落転換3)。下落していた176地点では86地点で下落幅が拡大した。方向は、はっきり下向きだ。
赤系=勢いが改善/灰=変わらず/青系=勢いが悪化。上の帯ほど青く、下の帯ほど青が深い——「上りは細く、下りは深く」。
上昇→下落に転じた3地点のうち2つは盛岡市。緑が丘4丁目(58,500円/㎡)が+3.5%→△0.2%、向中野5丁目(96,000円/㎡)が+2.4%→△0.3%。価格水準の高い人気地から先に息切れが始まった。
下落→上昇の2地点はいずれも大船渡市沿岸部(赤崎町 △4.9%→+1.6%、三陸町綾里 △4.2%→+2.3%)。前年は災害の影響もあって大きく下げた地域で、その影響の緩和が反転につながったとみられる。
横ばい→上昇は北上市北鬼柳(商業地)の+0.7%のみ。工業団地・物流集積に近接する幹線沿いで、産業の熱が商業地ににじみ出た形。
住宅地の最大下落は大槌町吉里吉里の△4.3%(前年△2.1%から拡大)。本年の災害の影響が及んだとみられ、沿岸部の変動率には引き続き幅がある。
上昇→横ばいの22地点のうち19地点が盛岡市内(ほか北上2・奥州1)。本宮・津志田・緑が丘など、昨年+3〜5%上げていた住宅地までが軒並み0%で止まった。
| 所在(用途) | R7 | R8 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 盛岡市緑が丘4丁目(住宅) | +3.5% | △0.2% | 転落 |
| 盛岡市向中野5丁目(住宅) | +2.4% | △0.3% | 転落 |
| 奥州市水沢字日高西(住宅) | +0.7% | △0.7% | 転落 |
| 大船渡市赤崎町字鳥沢(住宅) | △4.9% | +1.6% | 反転 |
| 大船渡市三陸町綾里字中曽根(住宅) | △4.2% | +2.3% | 反転 |
| 北上市北鬼柳19地割(商業) | 0.0% | +0.7% | 浮上 |
このほか「下げ止まり」(下落→横ばい)が6地点——花巻・一関2・八幡平2・岩手町。
| 所在(用途) | R7 | R8 | 減速幅 |
|---|---|---|---|
| 盛岡市西仙北1丁目(住宅) | +3.7% | +1.0% | ▼2.7pt |
| 盛岡市青山3丁目(住宅) | +4.1% | +1.4% | ▼2.7pt |
| 盛岡市月が丘1丁目(住宅) | +4.3% | +1.8% | ▼2.5pt |
| 盛岡市月が丘3丁目(住宅) | +4.3% | +1.8% | ▼2.5pt |
| 滝沢市巣子(住宅) | +4.9% | +2.5% | ▼2.4pt |
| 盛岡市北天昌寺町(住宅) | +4.1% | +1.7% | ▼2.4pt |
県央の人気住宅地で上昇率がほぼ半減。「上昇の質」の変化を示すシグナル。
住宅地の平均変動率がプラスの市町村は6市町のみ——花巻市が脱落し、前回の7市町から一つ減った。残った6市町もいずれも上昇幅は縮小し、33市町村中22で昨年より変動率を下げた。
| # | 所在 | 円/㎡ | R8 |
|---|---|---|---|
| 住宅地 ─ 上昇 TOP5 | |||
| 1 | 盛岡市永井18地割 | 67,500 | +5.1% |
| 2 | 盛岡市三本柳2地割 | 57,700 | +3.8% |
| 3 | 花巻市西大通り1丁目 | 37,700 | +3.6% |
| 4 | 盛岡市西見前12地割 | 55,500 | +3.5% |
| 5 | 花巻市本館1丁目 | 23,500 | +3.5% |
| 住宅地 ─ 下落 TOP5 | |||
| 1 | 大槌町吉里吉里1丁目 | 17,900 | △4.3% |
| 2 | 久慈市山形町霜畑第5地割 | 2,920 | △4.3% |
| 3 | 久慈市山形町川井第9地割 | 4,450 | △4.1% |
| 4 | 一戸町岩舘字沢田 | 9,880 | △4.1% |
| 5 | 一戸町西法寺字諏訪野 | 14,200 | △4.1% |
| 商業地 ─ 上昇 TOP3/下落 TOP3 | |||
| 1 | 盛岡市盛岡駅前通 | 336,000 | +9.4% |
| 2 | 盛岡市盛岡駅前通 | 188,000 | +7.4% |
| 3 | 盛岡市本宮6丁目 | 108,000 | +1.9% |
| 1 | 西和賀町川尻40地割 | 6,340 | △4.5% |
| 2 | 岩手町大字江刈内第10地割 | 15,800 | △4.2% |
| 3 | 二戸市堀野字馬場 | 30,200 | △4.1% |
| 工業地 ─ 上昇 TOP3/下落 2地点 | |||
| 1 | 奥州市江刺岩谷堂字松長根 | 7,650 | +4.8% |
| 2 | 矢巾町大字西徳田第8地割 | 19,700 | +3.1% |
| 3 | 北上市北工業団地 | 12,800 | +2.4% |
| 1 | 大船渡市盛町字二本枠 | 15,200 | △1.9% |
| 2 | 釜石市甲子町第9地割 | 17,100 | △1.2% |
参考:住宅地の県内最高価格は盛岡市本宮3丁目の107,000円/㎡(商業地は盛岡駅前通の336,000円/㎡)。
全343地点の動きを重ねると、今年の岩手の地価は3つの言葉で説明できる。以下は当社の見解(見立て)です。
建築費の高騰で住宅取得の総コストが家計の上限に接近し、価格水準の高い人気地(緑が丘・向中野)から先に息切れが表れた。上昇の主役は「まだ手が届く価格帯」の郊外——滝沢・矢巾・紫波——に移りつつあるとみられる。
盛岡駅前通の+9.4%はホテル・インバウンド投資が生んだ「点」の熱で、県内商業地の面的な回復ではない。同じ盛岡中心部でも菜園は+0.9%と温度差が大きく、投資マネーの選別は市街地の中でも進んでいる。
物流・半導体の用地需要で8年連続上昇も、上昇幅は縮小(+1.7%→+1.1%)。賃貸物流施設の新規供給に一服感が出ていること(当社「岩手県物流施設レポート」)と整合的で、来年は上昇の持続力が焦点になる。